『場の古典論』輪読補足(第2章8節)
以前、輪読wikiに書きました『場の古典論』の輪読資料の補足です。
第2章の8節で考えた作用がなぜ最小値を持ちうるのか、についてです。これについては実は第1章の3節で議論されているのですが、そこで書き損ねて書く場所をなくしたのでここで書きます。まず、改めて今回考えている作用がどんな形をしているかを再確認しましょう。
と書けます。3節ではこの積分の部分が一定の時に極大値をとる、と書いてあります。本当でしょうか?
それを確認するために、まずは単純な場合を考えてみましょう。具体的には積分の始点と終点で時刻がからに変わり、位置座標は変化しないという状況を考えましょう。
速度を一定にしようとすると、必然的にになります。それが青の経路です。この経路での作用積分は
と書けます。一方で、速度が一定でない赤の経路の作用を計算してみると(速度一定からのずれを とおく)
となります。こんなわけで青の経路において作用が最小になっていることが分かります。ここまでは『場の古典論』の第1章3節にも記述がありました。しかし、この議論を受けてこの後では「こうして、与えられた一対の世界点の間に取った積分は、これら二つの点を結ぶまっすぐな世界戦に対して最大値を持つ」と言っています。僕の頭ガン部位だけなのかもしれませんが、これは下の図のような場合を議論に入れていないような気がします。
そこで、この場合についての議論を行ってみることにしました。具体的な問題設定は以下のようになっています。
「世界点から世界点までの経路で作用積分を計算することを考える。青の経路は、速度という一定の速度で進む経路である。この経路はと表現される。さて、この青の経路に少しの変分を加えた赤の経路でも作用を計算してみよう。これが青の経路において極小であることを示せるか」
まず、青の経路に微小な変分を加えた経路をまず考えましょう。このような経路はと書き表すことができます。気持ちとしては変分の性質を決めるのがで、変分の大きさを決めるのがということです。また、境界の条件からであるとわかります。
さて、この変分の大きさを0近づける、つまりしていくことを考えましょう。変分を微小なものにするためです。そのときの作用の変化の仕方はで表されます。具体的にこれを計算する
これの第一項については、境界の条件からであることを用いると0になります。第二項についてはとすると0になります。したがってであるということが確認できました。
これで終わりな気もしますが、正確にはまだ少し仕事が残っています。今回示したいのは作用が極小値をとること、です。今のところ示したのは1階微分が0になることで、これでは極大値の可能性もありますし、なんなら停留値ですらない可能性もあります。そこで今度は2階微分を計算してみましょう。
となります。積分の中身ですが、どのようなについても必ず正になります。1階微分が0、2階微分が正なので、結局考えていた青の経路での作用が極小値になるということになります。
世界間隔の積分は作用と逆符号になるので、青の経路で極大値をとりますね。
以上、少しややこしかったですが、第1章3節と第2章8節で述べられていることの補足を行いました。こんなにややこしいことが求められているのかは甚だ疑問ですが、ひとまずはこれで安心して先に進めますね。